離婚する夫婦の中には子どもがいるケースもありますが、そのような場合は、子どもの親権をどちらが獲得するのかという問題が生じます。親権を得ることに関しては母親が圧倒的に有利で、離婚する夫婦の8割から9割は母親が子どもの親権を獲得しているとまで言われています。しかし、たとえ母親であっても親権を獲得できないことがあります。どのようなケースの場合、母親が親権を獲得できないのでしょうか。
親権とは、未成年の子どもを養育し、財産を管理する権利を指します。一般的には両親ともに子どもの親権を持っていますが、子どものいる夫婦が離婚した場合、親権はどちらか一方にのみ認められることとなります。
親権を失ってしまうと、子どもと一緒に暮らすことはもちろん、自由に会うことさえも困難となります。会う際には、親権を持っているもう片方の親の許可が必要であるためです。子どものいる夫婦が離婚する際には、夫と妻どちらが親権を獲得するかということが大きな争点となります。
親権は、基本的に離婚する当事者同士が話し合って決めますが、折り合いがつかない場合には離婚調停を行います。離婚調停をしてもなお折り合いがつかない場合、最終的には家庭裁判所での裁判によって決定されます。
親権獲得を決定する基準となるのは、「父親と母親のどちらと暮らすのが子どもにとって良いのか」という点です。また、子どもの年齢によっては、本人の意思も尊重されます。親権の決定に際して、子どもが10歳以上の場合は親の状況に加えて子どもの意思が考慮されます。子どもが15歳以上であれば、基本的に子どもの意思が尊重されます。
このようにして親権を決定する場合、8割から9割程度のケースで母親が親権を獲得できるようです。特に子どもが幼い場合、父親よりも母親の方が必要であるというのが一般的な認識として浸透しているためです。
まず考えられるケースは、すでに夫婦が別居しており、子どもが父親の元で問題なく暮らしている場合です。この場合、親権を母親に与えるとこれまで一緒に暮らしていた父親と子どもを引き離すこととなってしまいます。子どもに対してかえって良くない影響を与えてしまうかもしれません。このようなケースでは、母親に親権が認められないことがあります。
母親が子どもに悪影響を与えていることが認められる場合、子どもの年齢が低くとも父親が親権を獲得できる可能性が高くなります。たとえば、母親が子どもに暴力を振るっている、育児放棄をしているなどの事実が確認された場合です。他にも、母親が多額の借金を背負っている、男遊びが激しく、知らない男性が家に頻繁に出入りするというケースも親権者として認められない要因になるでしょう。
母親の不倫が原因で夫婦が離婚するというケースでは、不倫をした側が有責者と考えられます。そのため、たとえ母親が親権獲得に有利であっても、不倫をしてしまったために親権獲得を諦めなければならない場合もあります。しかし、不倫をしたという事実のみで親権が獲得できなくなるというわけではありません。親権の決定は子どもの利益を考慮して行われるものであり、有責者に対して罰を与える目的で取り上げるという趣旨はないためです。母親が不倫した場合であっても、母親の元で暮らした方が子どもの利益になると判断されれば、母親が親権を獲得することもあります。
母親が親権を獲得できないケースは他にもあります。子どもが15歳以上で、親権者に父親を選んだ場合です。前述した通り、子どもが15歳以上の場合は子ども本人の意思が尊重されるためです。
多くのケースで母親が親権を獲得できるものの、上記のように、母親であっても親権を勝ち取れない場合もあることを忘れてはいけません。離婚を考えている場合は、今回ご紹介したケースに当てはまらないかどうかを確認しておくと良いでしょう。