夫婦げんかのときに勢いで書いたまま提出しなかった離婚届はありませんか?次にいさかいが起こったときの切り札にするために保管し、妻の知らないうちに勝手に役所に提出してしまってトラブルになるケースが多くなっています。また、離婚届の偽装は犯罪ですが、たとえ偽装された離婚届であっても、受理され、離婚が成立してしまう危険もあります。そうした問題を未然に防ぐための制度が、「離婚届不受理申請」です。
今回は、離婚届不受理申請の概要や手続きの方法などについて説明します。
離婚届不受理申請は、「離婚届不受理申出書」を本籍がある市区町村の役所の、戸籍を扱う窓口に提出することで行います。本籍地以外の最寄りの市区町村へも提出できますが、提出した役所から本籍地の役所へ送付される間にタイムラグが生じてしまうため、急ぎの場合は本籍地へ提出すると良いでしょう。届け出に費用はかかりません。申請の際には免許証やパスポートなど本人確認のできるものと、印鑑が必要です。
書類は、近隣の役所で入手したり、インターネット上でダウンロードしたりできます。「申出人」の欄には自分の名前を、「夫又は妻(特定している場合)」の欄には、離婚届を提出する恐れのある夫の名前を書きましょう。「夫又は妻」の欄は空欄でも申請できます。また、押印の箇所は、認印で構いません。
この書類作成して提出していれば、たとえ夫が勝手に離婚届を提出したとしても、その離婚届は不受理となります。夫が離婚届を提出する前にあらかじめ不受理の手続きをしておくことが重要です。
離婚届不受理申出の有効期限は、提出してから届出人が申出を撤回するまで無期限となっています。したがって、夫と合意をし、実際に離婚をすることになった場合は、離婚届不受理申出を取り下げましょう。また、離婚届不受理申出で「夫又は妻」を特定しなかった場合、今の夫と離婚したあと再婚しても不受理申出の効力は継続するため、不要になった場合は早めに取り下げると良いでしょう。
取り下げのためには「不受理申出の取下げ書」に必要事項を記入し、離婚届不受理申出書を提出したときと同様に、本人確認書類と認印を持参して、役所に提出します。
なお、離婚届不受理申出書の届出人本人、つまり夫ではなく自分が離婚届を提出する場合には、不受理申出の取り下げ手続きは必要ありません。
離婚届不受理申請が間に合わず、もし離婚届が受理されてしまっても、届出時に離婚の意思がない場合の離婚は無効になります。離婚が有効になるか無効になるかは、離婚届の作成日ではなく、届出時の意思が問題になるからです。
いったん離婚届が受理された場合、離婚が無効であることを訴えるには調停や裁判をすることとなり、煩雑な手続きや労力が必要となります。提出していないままの離婚届が家庭にあるような場合には、万が一不受理申請が間に合わなかったときに備え、裁判で有利になるような証拠を作っておくことも大切です。たとえば、離婚届を保管している夫に離婚届を提出しないように伝えておいたり、書類作成日と提出日の間が開いていることを証明したりすることが有効です。
いかがでしたか?過去に離婚届を作成したことがある場合には、その離婚届を自ら破棄していない限り、勝手に離婚届を提出される恐れがあるということへ留意していなければいけません。離婚は双方の合意のもとでなされるべきです。不本意に離婚届が受理されることを防ぎ、大変な裁判や調停におよぶのを避けるために、早めに不受理申請を行って対策をしておきましょう。