日本では、再婚はできても重婚ができないことは周知の事実です。それでは、離婚後であっても再婚できない期間「再婚禁止期間」があるということはご存じでしょうか。
再婚禁止期間は男性には設けられておらず、女性にのみ設けられています。一体なぜこのような制度があるのでしょうか。女性にのみ設けられている期間であることにはどのような意味があるのでしょうか。
この記事では、離婚後の女性に制限を課す、再婚禁止期間についてご紹介します。
再婚禁止期間とは民法733条に挙げられているもので、女性にのみ設けられています。離婚が成立した後の半年間が再婚禁止期間とされており、離婚した女性はこの期間を経なければ他の男性と再婚できません。
再婚禁止期間が定められている理由は、女性が再婚後すぐに出産した場合に、父親が離婚した夫か再婚後の夫かで混乱することを防ぐためとされています。
なぜ期間が半年間なのかについてですが、法律では離婚が成立したその日から300日以内に出産した場合は離婚した夫が父親と推定されます。そして再婚が成立した日から200日を経過した後に出産した場合は再婚後の夫が父親と推定されます。再婚禁止期間は半年間、つまり約180日ありますが、この期間があることで子どもの父親を推定する期間が重ならなくなります。父親が誰なのかを容易に推定することができるのです。
再婚禁止期間については、女性にだけ設けられていることから「女性差別である」「違憲なのではないか」という意見もあります。しかし、過去には最高裁や地方裁にて合憲であるとの判決が出ています。あくまでも子どもの親権を特定するための制度であることが前提となっているため、女性差別のために再婚禁止期間を設けているわけではない、というのが裁判所の見解です。
再婚禁止期間は半年間と定められていますが、これには例外もあります。例外となるのは、生まれた子どもの父親が明らかである場合が挙げられます。例えば再婚相手が離婚相手と同一者である場合、離婚時にすでに妊娠している場合などがあります。
その他の特殊な例としては、夫が失踪宣告を受けた場合や、夫の生死不明状態が3年以上続き、裁判所の判断に基づいて離婚が成立した場合です。これらの例については再婚禁止期間の適用は除外されます。
失踪宣告については普通失踪と特別失踪があり、普通失踪の場合は7年間、特別失踪の場合は1年間以上の消息不明であることが要件になっています。再婚したのちすぐに出産に至ることがあっても父親の特定について混乱することがないため、再婚禁止期間の適用時除外という判断がなされます。
また、再婚禁止期間の例外に別居は含まれていません。長年の別居生活から協議離婚をした場合であっても、他の男性と再婚するためには離婚が成立してから6か月以上経過している必要があります。
普段の生活であまり聞き慣れない「再婚禁止期間」は、子どもの親権を特定するための制度として設けられています。決して女性差別のためのものではなく、合憲という判断もなされています。しかし、現代医療の発達によって子どもの父親の特定は不可能ではなくなっています。そのため、時代に合った制度かどうかについてはさまざまな意見があるようです。
再婚禁止期間が合憲であるという理由の1つには、客観的に見て「適正な親子関係、家族関係が認められる状態を維持することの大切さ」を重んじているということがあります。結婚は紙切れ1枚でできると耳にすることがありますが、その紙切れ1枚には大切な意味が存在します。もちろん離婚においても同様ではないでしょうか。再婚禁止期間は、離婚や再婚を考えている場合には特に知っておきたい情報であると言えるでしょう。