不倫して妊娠…中絶手術の同意書は偽名でも大丈夫？

人が誰かを好きになる気持ちというのは、必ずしも抑えられるとは限らないものです。相手が妻子持ちだとしても、自分に夫がいても、誰かを好きになってしまうことはあるでしょう。そのため、不倫自体は仕方がないものかもしれません。しかし、不倫相手との間に子供ができてしまったとなると、「仕方がない」と簡単に流せることではなくなってしまいます。明確な対策を考えた方が良いでしょう。特に、お互いが既婚者であるいわゆる『W（ダブル）不倫』の場合、産むという選択肢をとることは残念ながら非常に難しいことです。

このような場合には、婦人科を受診して妊娠中絶を行う必要があります。妊娠中絶をする場合には、同意書に中絶する本人と配偶者の署名をしなければなりません。ここで問題となるのが、署名する名前が本名でなければならないのか、そして配偶者は不倫相手ではなく実際の配偶者の名前でなければならないのか、ということです。ここでは、不倫相手との間にできた子供を中絶する際の同意書に関する問題についてご紹介します。

そもそも妊娠中絶手術とは？

最初に、妊娠中絶手術がどのような時に行われるものなのかをご紹介します。

妊娠中絶手術を受けるためには、次の条件のどちらかを満たす必要があります。1つめは「身体的・経済的に妊娠の維持や分娩が難しい場合」、そして2つめは「性的暴行によって妊娠してしまった場合」です。

妊娠中絶を受けられるのは、妊娠22週未満までです。これを超えてしまうと、法律上いかなる理由があったとしても妊娠中絶手術を受けることはできません。不倫相手との間にできた子供であったとしてももちろん同じです。早めに判断する必要があると言えるでしょう。

妊娠中絶手術は、妊娠11週までの妊娠初期、妊娠12週以降22週未満までの妊娠中期とで手術の方法が異なります。初期の場合は子宮口を開いて胎児や胎盤を吸い出すという方法で、手術自体は数分で終わります。病院にもよりますが、基本的には入院せずともよく、半日ほどで帰宅できます。一方中期の場合、胎児が育ってきていることもあって人工的に子宮口を開いただけでは胎児を吸い出すことができません。そのため、座薬や点滴で陣痛を引き起こして出産するという方法をとることになります。妊娠中期の中絶は半日では行えないため、必ず入院しなければなりません。

中絶したあとは、7日間以内に医師から死産証書をもらって役所に死産届を提出します。死産届を提出すると火葬・埋葬許可書が発行され、中絶した胎児を埋葬することとなります。中絶の場合は出生届と死亡届を出すのではなく、死産届の提出だけです。戸籍に「死産した」「中絶した」といった情報は残りません。

同意書の作成はどうすればいいの？

妊娠中絶手術を受ける場合、手術を受ける本人とその配偶者が署名・捺印した同意書が必要です。不倫の場合、配偶者の欄は不倫相手の名前にする必要があるため、不倫相手に署名・捺印してもらいましょう。

この同意書はいわゆる「公文書」にあたるため、本人や配偶者の氏名欄に偽名を記入すると『公文書偽造及び行使』という刑事罰が科される可能性があります。1年以上10年以下の懲役という重い罰が設定されているので注意しましょう。

ただし、その実態が法律通りになっているとは限りません。というのも、病院側は実際の氏名を書かずに中絶手術を行いたいと思っている人がいることを理解しているためです。

偽名が使われている？同意書の実態について

ここでは同意書の実態についてご紹介します。前項で、同意書を偽造すると罪に問われることを書きました。しかし、実際には偽名や偽住所で同意書を作る人も多いようです。偽名でも中絶手術を受けられる理由は、そもそも妊娠中絶手術が保険適用外の治療だからということが挙げられます。

たとえば風邪などの病気の治療であれば国民健康保険が適用されます。保険が適用される治療の場合は当然保険証を提示する必要があり、本人であることを示さなければなりません。しかし保険適用外の妊娠中絶手術に関しては、保険証を提示する必要がないのです。

おわりに

妊娠中絶手術の際に必要な同意書は、結論を言ってしまうと偽名で作っても問題ありません。偽名で作ったことが発覚して訴えられると刑事罰を科されることになりますが、保険証を提示しなければまず発覚することはないでしょう。

しかし、偽名で同意書を作れるからといって不倫相手と何も話し合わずに中絶をするのは避けた方が無難です。しっかり話し合っておかないとあとでトラブルの元となるかもしれません。不倫相手との子供を妊娠した場合は早いうちに話し合い、中絶するかどうかを決めるようにしましょう。